とりあえず画像です
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京ポン2より送信しました。 編集待ちです。 – Shigeru Kuru with WX310K |
それは、僕が車を走らせているときだった。家族は2つ年下の妻と高校生の長男、小学生の次男である。誰が言い出したものやら、たぶんラーメン好きの長男だろう。僕は坂を下った恵比寿駅に向かった。
恵比寿駅の近辺には、うまいラーメン屋があると言う。恵比寿だから東京ラーメンなのだろうと思うのだ。東京ラーメンは、鶏がらスープにしょうゆ味、ナルトにシナチク、うすいチャーシューのイメージがある。そこには、夕焼けの通りを西に向かって富士山の影を見ながら歩く小学生の僕が見えるような気がするものなのだ。
しかし、今の恵比寿はそんな思い出をあざ笑う。なんでこんなにベンツが多いのだろうか。左右から対抗してくるベンツを右ボタンで打ち落としながら僕の車は恵比寿駅前まで下った。
ラーメン屋など無い。
よく考えれば当たり前である。駅前にラーメン屋の集まった界隈があるわけが無い。
「ないね」
「ないね」
「ないね」
なぜにして、つぶらな瞳の家族どもよ。
日本男児として、こういうときこそ頑張らねばならない。のだろうけれども、ラーメン屋の影は無い。途方にくれる家長の俺。
と、車のドアの横を過ぎるサラリーマンの会話が耳に入った。
「金魚ラーメン、うまかったね」
それは、僕の打ちひしがれた気持ちを少しだけ奮い立たせてくれるものだった。
少なくともラーメン屋がある。この近くに。
辺りを見回した僕にVの字型に降りてくる坂道の間にあるほんの少しの道らしきものが見えた。
「よし!行くぞ」
「え?」「え!」「え?!」
家族は分裂して自転車に乗ってコーナーを回る。ジャンの音が聞こえた。
「突き当たるぞ!気にスンナ!」
僕は、すっかり海賊船の船長の気分で家族に声をかける。
「がってん」「承知の」「すけ!」
最後の次男の声はかすれていた。そして、隙間に衝突したと思ったのだったが。
少しの隙間に自転車を入れるとそこは、
「えびすラーメン街」だった。
左右には屋台ほどのラーメン屋が、アセチレン灯にまがまがしく息づいている。
和服姿の女がちょうちんの下でキセルをふかしている。ここは遊郭か?いや、やっぱりラーメン街だ。女たちはラーメン前売り券を売る売り子なのだ。袖の下に食券を入れる客たち。あでやかに笑う売り子たち。ああ、ついにたどり着いた、ラーメン桃源郷。
桃源郷の名にふさわしくのれんがいくつかたれているけれど。その中でひときわ輝いていたのが、「金魚ラーメン」だった。
迷わず、自転車を停めて店に入る。8人カウンターに4人がけテーブル席が3つ。
家族であるからに、テーブル席座る。食券はまだ買っていないが、僕は銀河鉄道の夜で知っているのだ。果たして、右ポケットには、「ケンタウルス座から金魚ラーメン1杯無料」と書かれた切符が入っていた。
「金魚ラーメン4つ!」
大きな声で注文をする。すると、女郎のような店員や五右衛門仕様の置物までががうなづいた。
そして、店主らしいスキンヘッドの男がやってくる。
「当店のスープは、透明なスープであります。そして、麺はツルツルの卵が入った中細麺。丼の底には、色鮮やかな金魚の絵が入っておりまする。ラーメンが出たら麺の間をちょっとだけ分けてください。金魚ラーメンでございまする」
あまりの迫力におされた僕は、ラーメン丼を覗き込む。底には確かにいた。
箸を伸ばして麺を分けている自分の姿が。
という夢を見たので忘れないように書いておく。